【No985】相続時精算課税制度の質疑応答事例について

相続時精算課税制度は、平成15年度税制改正において、次世代への早期の資産移転と有効活用を通じた経済活性化の観点から導入されました。しかし、相続時精算課税制度は、生前贈与か相続かによる税負担は変わらないことから選択する者は限定的でした。そこで、相続時精算課税制度の使い勝手の向上を目的として令和5年度税制改正において改正が行われ、暦年課税との選択制は維持しつつ、相続時精算課税においても、暦年課税と同水準である110万円基礎控除が創設されました。この改正により相続時精算課税を選択する者の増加が見込まれています。そこで今回は、国税庁より新たに公開された質疑応答事例の一部をご紹介します。

Q.相続時精算課税選択届出書を単独で提出した後に贈与税の期限後申告書を提出する場合の相続時精算課税の適用の可否

甲は、父から価額100万円の財産の贈与を受けたが、相続時精算課税に係る基礎控除の額以下であったため、贈与税の申告書は提出していなかった。

その後、その財産の価額が100万円ではなく、500万円であったということが判明したため、贈与税の期限後申告書を提出した。

なお、相続時精算課税選択届出書は贈与税の申告書の提出期間内に単独で提出している。

この場合において、相続時精算課税を適用して贈与税を計算できるか?

A.

相続時精算課税を適用して贈与税を計算することとなります。

しかし、贈与税の期限内申告書の提出がなかったため、相続時精算課税の特別控除は適用されません。

Q.特定贈与者が贈与した年の中途に死亡した場合の相続税贈与税の課税価格に加算等される贈与財産の価額

甲(相続時精算課税適用者)は、父(特定贈与者)から現金1,000万円を、母(特定贈与者)から現金100万円を贈与により財産を取得したが、同年中に父が死亡した。

この場合において、「父の死亡に係る相続税の課税価格に加算される金額」及び「母からの贈与により取得した財産に係る贈与税の課税価格」に算入される金額はいくらか?

A.

相続時精算課税の適用を受ける財産については、その財産の価額から相続時精算課税に係る基礎控除の額を控除した残額が贈与税の課税価格に算入されることになるが、相続開始年の特定贈与者である被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産については、贈与税の申告は要しないこととされています。

特定贈与者の死亡に係る相続税の計算ついては、相続開始年に特定贈与者からの贈与により取得した財産の価額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額を課税価格に加算します。

この相続時精算課税に係る基礎控除額について、同一年中に相続時精算課税の適用を受ける財産を贈与した特定贈与者が2人以上いる場合で、そのうちに贈与をした年中に死亡した特定贈与者がいるときは、死亡した特定贈与者からの贈与により取得した財産の価額も贈与税の課税価格に含めて、それぞれの特定贈与者の相続時精算課税に係る基礎控除額を算出します。

(1)父の死亡に係る相続税の課税価格に加算される金額

(2)母からの贈与に係る贈与税の課税価格に算入される金額

(文責:税理士法人FP総合研究所)