【No984】令和5事務年度の所得税等の調査等の状況

国税庁から令和5事務年度(令和5年7月~令和6年6月)の所得税及び消費税調査等の状況が公表されました。

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf

1.所得税の調査等の状況

所得税の調査等件数は60万5,077件(前事務年度63万7,823件)で、そのうち実地調査の件数は4万7,528件(前事務年度4万6,306件)と、簡易な接触の件数が減少したことにより、実地調査の件数は増加しましたが調査等件数の合計では減少となりました。

申告漏れ所得金額は9,964億円(前事務年度9,041億円)で、そのうち実地調査の申告漏れ所得金額は5,516億円(前事務年度5,594億円)と前事務年度より若干減少しましたが、簡易な接触による申告漏れ所得金額が前事務年度比で129%と大きく増加しました。

追徴税額は1,398億円(前事務年度1,368億円)で、そのうち実地調査の追徴税額は1,066億円(前事務年度1,015億円)といずれも増加しました。

国税庁の発表によりますと、申告漏れ所得金額の総額及び追徴税額の総額は過去最高を記録しており、調査の選定にAIを活用するなど、効率的に調査が行われたことが要因となっています。

【所得税の調査等の状況】

※簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

2.消費税の調査等の状況

消費税(個人事業者)の調査等件数は12万495件(前事務年度9万3,985件)で、そのうち実地調査の件数は2万6,576件(前事務年度2万5,513件)といずれも増加しました。

追徴税額は423億円(前事務年度396億円)で、そのうち実地調査の追徴税額は359億円(前事務年度336億円)といずれも増加しています。

なお、消費税についても、調査等合計の追徴税額の総額は過去最高を記録しています。

【消費税の調査等の状況】

3.主な取り組み

資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に、有価証券・不動産等の⼤⼝所有者、経常的な所得が特に⾼額な個人などの「富裕層」に対する調査や、経済社会の国際化に適切に対応していくため、海外投資を⾏っている個人や海外資産を保有している個人などに対する調査を、様々な情報を効果的に活⽤して引き続き積極的に実施されています。なお、富裕層に対する追徴税額は183億円(前事務年度238億円)で前年からは減少している状況ですが、富裕層に対する調査の1件あたりの追徴税額は707万円、海外投資等を⾏っている個人に対する調査の1件当たりの追徴税額は649万円と、所得税の実地調査全体の1件あたりの追徴税額229万円と比較すると高額な追徴額となっています。

その他、インターネット上のプラットフォームを介して⾏うシェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引や暗号資産(仮想通貨)等の取引を⾏っている個人に対しても引き続き積極的な調査が実施されています。

消費税につきましても、無申告は適正に申告をしている納税者から強い不公平感をもたらすことになるため、適格かつ厳格に対応する必要があるとして、実地調査のみならず、簡易な接触も活用して積極的に調査が実施されています。また、消費税の還付についても添付書類やその他の資料情報等に基づいて厳格な審査が実施されています。

令和5事務年度における事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種は、前事務年度と同様に「経営コンサルタント」が1位となっておりますが、次いで前事務年度では上位10位に入っていなかった「ホステス、ホスト」が2位、「コンテンツ配信」が3位となっています。

(文責:税理士法人FP総合研究所)