【No975】空き家特例の契約締結に関する注意点について

令和6年1月1日以後の譲渡に係る空き家特例について、「買主」が耐震改修工事や取壊し工事を行った場合においても特例の対象となりました。

譲渡後に買主が工事等を行う場合においてもその年の翌年2月15日までにその工事等が完了している必要があります。今回は、その工事等を買主側が行う場合の注意点についてご紹介させていただきます。

(1)添付書類の請求

買主による工事等で空き家特例の適用を受ける場合においても、確定申告書に「被相続人居住用家屋等確認書」を添付する必要があります。

家屋所在地の市区町村で被相続人居住用家屋等確認書の交付申請を行うことができますが、その申請の際には、買主に取得してもらう下記書類の提出が求められますのでご注意ください。

①耐震改修工事の場合・・・耐震基準適合日等の確認書類(耐震基準適合証明書、工事請負契約書の写し、工事費用の領収書等)

②取壊しの場合・・・家屋全部の取壊し等完了日の確認書類(閉鎖事項証明書等)

なお、申請から発行までの期間につきましては、市区町村によって異なりますが、大阪では7~10日程度要しています。特に確定申告時期になると申請窓口が混雑する影響でさらに時間を要することがあります。

また、上記書類の他、「特約書等の写し」(下記(2)参照)の提出も求められます。

(2)売買契約書締結時の特約等の記載

空き家特例の適用を受けるには譲渡年の翌年2月15日までに工事等が完了している必要がありますが、買主の協力が得られず、買主が譲渡年の翌年2月15日までに工事を完了させない、買主が工事を完了させた後に取得すべき書類が交付してもらえないといったことから、空き家特例を適用できないケースが生じる恐れがあります。

国土交通省は、こうしたトラブルを防止するために、市区町村での申請時に確認事項として特約書等の写しの提出を求めることとしていますので、売買契約時に特約等の交わし漏れがないようご注意ください。

また、参考として国土交通省では下記特約の例文を公表しており、工事完了期日、必要書類の交付期日を定める文言の他、これらの期日を守らず空き家特例を適用できなかった場合、買主に対して損害賠償請求が可能とする文言が示されています。

〇耐震基準に適合させる場合

1.売主及び買主は、売主が本契約について租税特別措置法(昭和 32 年法律第 26 号)第 35 条第3項に定める空き家の譲渡所得の特別控除(以下「特別控除」という。)の適用を受けることを前提として、本契約の売買価格等諸条件を決定したことを互いに確認します。

2.売主及び買主は、本件土地及び建物の所有権移転後に買主が本件建物について同法第 35条第3項に定める耐震基準に適合させるための工事(以下「本工事」という。)を行うことに合意し、本工事については買主の責任と負担において、令和〇年〇月〇日までに完了させることとします。

なお、買主は、売主が本契約について特別控除の適用を受けるために必要となる書類(以下「必要書類」という。)を取得のうえ、令和〇年〇月〇日までに売主へ交付するものとします。

3.前項のとおり買主が本工事を完了できない又は売主へ必要書類を交付しないことにより、売主が特別控除を受けることができなかった場合、売主は買主に対し、特別控除を受けることによって本来得られた税控除額相当額の損害賠償を買主に請求することができることとします。ただし、買主の責めに帰することができない事由により買主が義務を履行できなかった場合は、買主は責任を負わないものとします。

〇取壊しの場合

1.売主及び買主は、売主が本契約について租税特別措置法(昭和32 年法律第26 号)第35条第3項に定める空き家の譲渡所得の特別控除(以下「特別控除」という。)の適用を受けることを前提として、本契約の売買価格等諸条件を決定したことを互いに確認します。

2.売主及び買主は、本件土地及び建物の所有権移転後に買主が本件建物の全部の取壊し又は除却工事(以下「本工事」という。)を行うことに合意し、本工事については買主の責任と負担に おいて、令和〇年〇月〇日までに完了させることとします。 なお、買主は、売主が本契約について特別控除の適用を受けるために必要となる書類(以下 「必要書類」という。)を取得のうえ、令和〇年〇月〇日までに売主へ交付するものとします。

3.前項のとおり買主が本工事を完了できない又は売主へ必要書類の交付をしないことにより、 売主が特別控除を受けることができなかった場合、売主は買主に対し、特別控除を受けること によって本来得られた税控除額相当額の損害賠償を買主に請求することができることとします。ただし、買主の責めに帰することができない事由により買主が義務を履行できなかった場合は、 買主は責任を負わないものとします。

※上記は売主が本特例措置を受けることができなかった場合の損害賠償について定める特約等の例であるため、売買契約の特約等に付帯する際は、契約の当事者間にて合意した内容に応じ、適宜修正・加筆のうえ利用すること。

(出典:国土交通省)

(文責:税理士法人FP総合研究所)