【No974】インボイス制度導入後における個人事業者の消費税の申告状況について

国税庁より令和5年分の申告状況についての報道発表がありました。そのうちインボイス制度導入後初めてである個人事業者の消費税の申告状況についてご説明します。

1)消費税の申告状況 

令和5年分の個人事業者の消費税の申告件数については、197 万 2 千件であり、令和4年分の申告件数から91 万 7 千件増加したこととなり、そのうち納税申告については891千件増加の1885千件、還付申告については26千件増加の87千件となります。

また、申告書を提出した人のうち申告納税額がある人の申告納税額は6,850億円であり、令和4年分の申告納税額から573億円増加したこととなります。

【消費税の申告状況の推移】

(出所:国税庁)

今回の申告件数等の増加については昨年、令和5年10月1日より導入された消費税のインボイス制度が大きく影響していることとなります。

インボイス制度とは消費税の仕入税額控除の方式の1 つで、税務署から登録を受けた適格請求書発行事業者(以下「インボイス発行事業者」)が発行する適格請求書、いわゆるインボイスと帳簿の保存をすることで、仕入税額控除を適用することができる制度となります。

なお、インボイス発行事業者については、消費税の課税事業者でなければその登録を受けることができないため、結果として、消費税の免税事業者については、インボイスを交付することができないこととなり、この場合、免税事業者は、取引先等との関係を踏まえて、インボイス発行事業者になるために、消費税の課税事業者になることを選択する必要があったこと等から今回の申告件数等の増加に繋がったものと考えられます。

2)インボイス発行事業者の消費税の申告状況 

今回の報道発表については参考としてインボイス発行事業者の消費税の申告状況についても発表されており、令和5年中にインボイス発行事業者となった人は1,976千人であり、このうち期限内申告者については約9割の1,744千人となりました。

なお、登録をしている者の中には、令和5年中に申告すべき取引等がないため、消費税の申告義務がない者も含まれており、インボイス発行事業者のうち事業所得、不動産所得等に係る収入金額を有しており消費税の申告義務が基本的にあると考えられる者の申告状況については、約94%が期限内に消費税の申告を行っています。

また、免税事業者からインボイス発行事業者になった者は 1,048千人であり、このうち期限内の申告者数は875千人となりました。

なお、免税事業者からインボイス発行事業者になった人のうち、2割特例(免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)になった場合、売上げに係る消費税額の2割を納付税額とすることができる特例)を適用した申告者については734千人であり、期限内の申告者数の83.9%がこの特例の適用を受けて申告されていることが確認できます。

【インボイス発行事業者の消費税の申告状況】

(出所:国税庁)

【申告したインボイス発行事業者の内訳、2割特例適用者の割合】

(出所:国税庁)

(文責:税理士法人FP総合研究所)