【No971】遺言書作成のポイント ~予備的遺言(補充遺言)について~

特定の者へ相続させる(遺贈する)旨の遺言書を作成しても、その特定の者が遺言者よりも先に亡くなってしまうことも想定しておかなければなりません。その者が亡くなってから改めて遺言書を作成し直すことも考えられますが、その時点で認知症などの症状により改めて遺言書を作成することが困難な状況となっていることも考えられます。

このような事態に備えるため、遺言者よりも先に財産を相続させたい人が亡くなっている場合を想定したケースを含めて一つの遺言に記載する方法を採用しておけば、改めて作成し直す必要がなく安心です。このような記載方法を予備的遺言(補充遺言)といいます。今回は予備的遺言(補充遺言)の記載方法について解説します。

1.予備的遺言(補充遺言)の必要性

民法第994条では「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときはその効力を生じない。」と規定されています。

例えば、夫婦がお互いにすべての財産を配偶者に相続させる旨の遺言をした場合で、一方が亡くなった際にはその遺言書に基づきすべての財産が配偶者に承継されますが、後に亡くなった者は財産を取得すべき者がいないため、その遺言は無効となってしまいます。

別のケースで考えると、長男(子あり)と長女に財産を相続させる遺言をした場合に、万が一、長男が遺言者よりも先に死亡したときは、長男に相続させることにした部分についてはその遺言は無効となり、長女と長男の子による遺産分割協議が必要となります。

勿論、その配偶者や長男の死後において、新たに遺言書を書き換えることも選択肢の一つですが、そうすると公証人の作成費用などが再び必要となってしまいます。また、作成し直したい時に遺言者の意思能力に問題が生じてしまっていると、書き換え自体が不可能な場合も想定されます。

このような問題点に対しては、一つの遺言において、財産を承継させたい人が遺言者よりも先に亡くなっている場合を想定して、その場合の財産の承継方法についても併せて記載しておく「予備的遺言(補充遺言)」を行っておくことにより解決できます。

2.予備的遺言(補充遺言)の記載方法

予備的遺言においては、当初の遺言に「〇〇は配偶者に相続させる」としたうえで、「ただし、配偶者が遺言者よりも先に死亡している場合には、〇〇は甥に相続させる」といった補充遺言を採用しておけば、仮に配偶者の相続が発生したとしても一つの遺言書で対応ができることになります。

(文責:税理士法人FP総合研究所)