【No970】遺言書作成のポイント~ 遺言の種類とその特徴 ~

「終活」という言葉が認知され始めた昨今において、ご家族や遺産に対する思いを生前に記しておくことができる遺言が注目されています。また、相続する人がいない「相続人不存在」となるケースも多くなってきており、そのような場合に財産を渡したい方がいるのであれば遺言書の作成が必須となります。このように、今後、遺言書の作成が必要な方はさらに増えてくることが見込まれます。今回は、遺言書の種類やその特徴について解説します。

1.遺言書の種類とその特徴

民法では、普通方式遺言3種類と特別方式遺言4種類を定めており、原則として普通方式遺言で作成することになります。普通方式遺言は、自筆証書遺言、公正証書遺言及び秘密証書遺言の3種類であり、それぞれ次のような特徴があります。現在の遺言者の状況や今後の書き換えの可能性等を考慮して、どの遺言書を選択するか検討する必要があります。

2.それぞれの遺言の長所と短所

(1)公正証書遺言

公正証書遺言は作成にあたってそれなりの費用が発生する一方で、公証人が作成し、その原本を公証人役場で保管するため、安全性の高い遺言になります。例えば多少手間や費用が掛かったとしても、財産内容や分け方が複雑な遺言を、法的に確実に作成したい方におすすめの遺言です。

(2)自筆証書遺言

自筆証書遺言は自宅で自分だけで作成することも可能のため、作成が手軽という点が大きなメリットになります。その一方、公正証書遺言と異なり、自分だけで作成することで遺言書の方式が要件に従って作成できていなかったとして、遺言書が無効となってしまう等といった法的安全性が低いというデメリットがあります。例えばシンプルな内容の遺言(すべての財産を○○に相続させる等)を作成したい方でできる限り手間や費用をかけたくない方におすすめの遺言です。

(3)秘密証書遺言

秘密証書遺言は自筆証書遺言と同様に遺言者自身で遺言書を作成するために無効となってしまうリスクがあり、また、公正証書遺言ほどではないものの公証人役場に出向く必要や公証人手数料(11,000円)が発生する等といった手間や費用がかかるというデメリットもある遺言です。ただし、秘密証書遺言は遺言の全文を自分で作成し、封印したうえで公証人役場に持ち込んで公証人に遺言であることを証明してもらうため、遺言書の存在自体は公証人役場で明確にしつつ、その内容を秘密にすることができるという点に最大のメリットがあります。遺言の内容を誰にも知られたくないという方におすすめの遺言ですが、秘密証書遺言の作成件数は他の普通方式遺言に比べて非常に少なく、長所よりも短所の方が多いと考える方が多いようです。

3.まとめ

ここまで説明したとおり遺言の種類によって様々なメリット・デメリットがあるため、どのような遺言を作成したいか、どれくらいの手間や費用で作成したいか等といった遺言者自身の状況に合わせて、作成する遺言の種類を選択することが肝要です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)