【No966】相続登記の申請の義務化

令和6年4月1日から「相続登記申請の義務化」が施行されています。

今回の取扱いは施行日以後の相続等が対象となることはもちろん、同日以前に相続が開始している場合も対象とされています。

1.なぜ相続登記が義務化されるのか?

不動産の所有者が亡くなると、その後承継する方に名義変更(相続登記)をしますが、この相続登記は任意とされていましたので、相続登記が未了のままで放置されることで「所有者不明土地」が多く存在することになりました。

そこで、令和3年の民法等の改正の一つとして、相続登記申請義務化が定められ令和6年4月1日から施行されることとなりました。

2.相続登記義務化の制度内容

以下の2つの義務が新たに課されることになります。

(1)基本的義務

 相続(特定財産承継遺言を含む)や遺贈により不動産を取得した相続人等に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をする必要があります。

(2)追加的義務

遺産分割が調った場合には、その内容を踏まえた不動産登記を反映させることが、その後の土地の処分に当たっても便宜であることから、遺産分割が成立してから3年以内に遺産分割内容を踏まえた登記申請をする必要があります。

(3)新たに創設される「相続人申告登記」とは?

遺産分割が不調である場合などこれらの義務を果たせない可能性がある場合には、新たに創設される「相続人申告登記」を行うことで、少なくとも(1)の義務を果たす必要があります。その後遺産分割が調った場合には、(2)の遺産分割内容を踏まえた登記を行うことが必要となります。

「相続人申告登記」は、遺産分割協議が難しい場合などはそれぞれの相続人がこの義務を果たすためには必ずすべき手続きとなりますが、個々の相続人が単独でもできます。登記簿には、その手続きした相続人の住所・氏名等が記載されます。

(出典:法務省民事局)

(出典:法務省民事局)

<遺言書があったケース>

遺言でその承継者が明記されている場合には、その遺言によって不動産を取得することを知った日から3年以内に相続登記申請をする必要があります。

(出典:法務省民事局)

3.罰則

正当な理由がないのに登記申請義務に違反した場合には、10万円以下の過料の適用対象となります。

ただ実務的には、登記義務違反の状況になっていることを法務局から相続人に催告を行った上でも、なお登記申請に応じない場合に過料を課することとされます。

4.経過措置

相続登記義務化は令和6年4月1日施行ですが、この日以前に開始したすべての相続について、この相続登記申請義務が課されます。ただし、過去の相続については、経過措置として「施行日」と「遺産分割が確定した日」とのいずれか遅い日から3年を経過する日を期限とすることとなります。よって、過去の多くの相続については、令和9年3月31日までに相続登記申請を完了する必要がありますので、まだ先代名義のままの不動産がある場合にはご注意ください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)