【No921】相続土地国庫帰属制度の対象とならない土地について
令和 5 年 4 月 27 日より施行されている「相続土地国家帰属制度」について、資産税 FPNews №911・№913 に引き続き、申請ができない土地と帰属の承認がされない土地について解説します。
1.申請することができない土地
次の事由に該当する土地については、直ちに、通常の管理又は処分をするに当たって過分の費用又は労力を要するものと扱われるため承認申請することができません。
(1)建物がある土地
建物は、一般に管理コストが土地以上に高額であること、また、老朽化すると、管理に要する費用や労力が更に増加するだけでなく、最終的には建替えや取壊しが必要になるため、承認申請することができません。
(2)担保権や使用収益権が設定されている土地
抵当権等の担保権や、地上権、地役権、賃借権等の使用収益権が設定されている場合、国が管理を行う際に、これらの権利者に配慮しなければならず、場合によっては、担保権が実行されて国が土地所有権を失う可能性もあるため、承認申請することができません。
(3)他人の利用が予定されている土地
実際に土地使用者以外の者により使用されており、今後もその使用が予定されている土地については、これを国庫に帰属させた場合、その管理に当たって、国と使用者等との間で調整が必要となるため、承認申請することができません。
【政令で定める具体例】
①現に道路として利用されている土地
②墓地内の土地
③境内地
④現在、水道用地、用悪水路、ため池として利用されている土地
(4)特定有害物質により土壌汚染されている土地
特定有害物質によりその土壌が汚染されている土地は、その管理又は処分に制約が生じ、汚染の除去のために多大な費用がかかる上に、場合によっては周囲に害悪を発生させるおそれがあるため、承認申請することができません。
(5)境界が明らかでない土地・所有者の存否や帰属、範囲について争いがある土地
隣接する土地の所有者との間で所有権の境界が争われている土地や、承認申請者以外にその土地の所有権を主張する者がいる土地など、土地の所有者の存否、帰属又は範囲について争いがある土地については、土地の管理を行う上で障害が生じるため、承認申請することができません。
2.承認を受けることができない土地
次の事由に該当する土地については、土地の種別や現況、隣地の状況等を踏まえ、実質的に通常の管理又は処分をするに当たり、過分の費用又は労力を要すると判断されるため、帰属の承認をすることができません。
(1)一定の勾配・高さの崖があり、かつ、管理に過分な費用・労力がかかる土地
政令で定める崖の基準(勾配 30 度以上で高さ 5 メートル以上)に該当する崖がある土地であって、通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要する場合には、帰属の承認をすることができません。
(2)土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
工作物、車両又は樹木その他の有体物が存し、かつ、その有体物が土地の通常の管理又は処分を阻害する場合には、帰属の承認をすることができません。
(3)土地の管理・処分のために、除去しなければならない有体物が地下にある土地
除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地については、帰属の承認をすることができません。
(4)隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)、水路等を通らなければ公道に出ることができない土地又は崖があって土地と公道とのに著しい高低差がある土地は、民法上、その土地を囲んでいる土地を通行することが認められていますが、この通行が現に妨げられている土地については、帰属の承認をすることができません。
また、所有者以外の第三者によって、土地の所有者の所有権に基づく使用又は収益が現に妨害されている土地についても、帰属の承認をすることができません。
(5)その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
次の類型に該当する土地等については、帰属の承認をすることができません。
①災害の危険により、土地周辺の人や財産に被害を生じさせるおそれを防止するための土地が必要な土地
②土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地
③適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が必要な森林
④国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
⑤国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地
(文責:税理士法人FP総合研究所)