【No917】相続時精算課税制度適用者に対するお知らせの送付(試行)の開始について
生前贈与加算または相続時精算課税制度の適用を受ける贈与財産がある場合には、相続税の申告にあたってその財産を相続財産に加算して相続税額を計算することとなります。
適用を受ける贈与財産がないかを確認するために「贈与税の申告内容の開示請求手続」という制度が設けられていますが、現状適用を受けていることを忘れて加算漏れが生じているケースが多数あります。
そのため、東京国税局は、行政指導の一環として相続時精算課税制度適用者に対して相続税の申告期限前にお知らせを送付する独自の取組みを開始しました。今回はその取組みについてご紹介します。
1.開示請求について
相続税の申告書の提出または更正の請求に必要となる場合に限り、他の相続人等が被相続人から受けた相続開始前3年以内の贈与又は相続時精算課税制度適用分の贈与に係る贈与税の課税価格の合計額について、相続税法第49条第1項に基づき税務署に対して開示の請求をすることができます。
開示の請求は、その被相続人に係る相続の開始日の属する年の3月16日以後に行うことができ、開示の請求があった場合には、税務署長は請求後2か月以内に開示をしなければならないこととなっています。
贈与税の課税価格の合計額は、次に掲げる金額ごとに開示されます。
①被相続人に係る相続開始前3年以内にその被相続人から贈与により取得した財産の価額(贈与税の配偶者控除に係る特定贈与財産の価額及び相続時精算課税の適用を受ける財産の価額を除く。)の合計額
②被相続人から贈与により取得した財産で、相続時精算課税の適用を受けたものの合計額
※この制度は自分以外の相続人等に対する贈与が対象となるため、自分への贈与について調べる場合には、「申告書等閲覧サービス」や「個人情報に係る開示請求」を利用する必要があります。
2.新しい取組の概要
過去の贈与税の申告実績を基に、相続税の申告案内※1の対象となった被相続人から相続時精算課税制度に係る贈与を受けた受贈者に対して、同制度の適用を受けている旨のお知らせ※2が送付されます。
※1 申告が必要になる可能性があると税務署が判断した場合に、「相続税の申告等についての御案内」という書類が、死亡届等を提出した方に送付されます。
※2 現状案では同制度の適用を受ける財産を申告した年分が通知されることとなっています。
3.実施時期と送付時期
令和5年5月からお知らせの送付が開始されています。なお、対象は令和4年10月相続開始分で、以降毎月送付される予定とされています。
お知らせは概ね相続税の申告期限の3か月前を目途に対象者に送付される予定とされています。
4.留意点
①最初に述べたように東京国税局独自の取組みであり、被相続人の死亡時における住所が東京国税局管轄内であることが前提となります。
②ただし、次の場合などには送付は行われないこととされています。
・相続税の申告案内の対象になっていない場合
・相続時精算課税制度を適用した受贈者(相続人等)が東京国税局の管轄外に居住している場合(※)
※例えば、相続人が複数いる場合で、東京国税局の管轄内に居住する相続人と同管轄外に居住する相続人の
いずれの方も同制度を適用している場合には、いずれの方も送付対象から除かれることとなります。
本試行はあくまでも納税者サービスの一環として実施されるものであり、必ずしも相続時精算課税制度の適用者全員に送付されるわけではありません。したがって、お知らせが届かない=相続時精算課税適用財産がないということではないため、積極的に贈与税の開示請求手続きを利用して相続財産の把握に努める必要があります。
(文責:税理士法人FP総合研究所)