【No910】住宅取得等資金に係る贈与税の非課税 ケーススタディQ&A
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置は令和5年12月31日までに贈与を受けたものが対象となります。適用を受けるためには細かい要件がありますので、今回はその一部をQ&A形式で確認します。
1.制度の概要(暦年課税)
令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、その年の1月1日において18歳以上(※)の者(以下「特定受贈者」といいます)が、直系尊属から自己の居住の用に供する一定の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます)の贈与を受けた場合において、その全額を取得等の対価に充て、その贈与の年の翌年3月15日までに居住の用に供したとき又は居住の用に供することが確実と見込まれるときは、その住宅取得等資金のうち非課税限度額までの金額について贈与税が非課税とされます。
令和4年1月1日以後の贈与により取得する住宅取得等資金の非課税限度額は、住宅用家屋の取得等に係る契約の締結時期にかかわらず、住宅取得等資金の贈与を受けて新築等をした次に掲げる住宅用家屋の区分に応じ、それぞれ定める金額とされます。
(※)令和4年3月31日までの贈与は20歳以上
2.ケーススタディQ&A
(Q1)特定受贈者が非居住者
海外赴任をしている子が年内に帰国することになり、私(父)は子に住宅取得等資金の贈与をしようと思いますが、子の贈与税において非課税の適用を受けることができますか?
A.適用を受けることができます。特定受贈者は、居住無制限納税義務者(贈与時に日本国内に住所を有している者)又は、非居住無制限納税義務者(贈与時に日本国内に住所を有しない者で、かつ、日本国籍を有している者)であることを要件とします。そのため、贈与を受けた時において非居住者であっても、他の要件を満たせば適用可能です。
(Q2)所得要件
(Q1)の場合で、子の外国での所得(国外源泉所得)が1,800万円、帰国後日本での所得が500万円になる見込みです。子の贈与税において非課税の適用を受けることができますか?
A.適用を受けることができます。特定受贈者は、贈与を受けた年分の合計所得金額が2,000万円(新築等をした家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満である場合には1,000万円)以下であることを要件とします。合計所得金額は、事業所得・不動産所得・給与所得等の合計額に申告分離課税の所得金額(譲渡所得は特別控除前の金額)を加算した金額とされ、非居住者であった期間の国外源泉所得は合計所得金額に含めませんので、所得要件を満たします。
(Q3)直系尊属
私の父が私の夫に住宅取得等資金の贈与をして、夫が住宅用家屋を取得する場合に、夫の贈与税において非課税の適用を受けることができますか?
A.適用を受けることができません。祖父母や父母などの直系尊属からの贈与であることを要件としますので、義理の父からの贈与は適用を受けることができません。ただし、養子縁組によって法定血族関係にある場合は適用が受けられます。
(Q4)分譲マンションの取得
私は、父から贈与を受けた住宅取得等資金と自己資金で新築の分譲マンションを購入します。売買契約締結後、令和5年12月20日に購入代金の全額を売主に支払いました。マンションの引渡しは令和6年3月31日になりますが、非課税の適用を受けることができますか?
A.適用を受けることができません。分譲マンションや建売住宅の「取得」は、「引渡しを受けること」を指しますので、贈与の年の翌年3月15日までに取得していないことになり、非課税の適用を受けることができません。
(Q5)家屋の所有
私は、父からの住宅取得等資金の贈与により住宅の敷地を購入し、家屋は夫が住宅ローンで取得する予定です。父からの贈与は非課税の適用を受けることができますか?
A.適用を受けることができません。住宅用家屋の取得とともにするその敷地の用に供される土地等の取得についても非課税の適用を受けることができますが、その土地等の上にある家屋の取得がない場合は適用が受けられません。適用を受けるためには、家屋の持分をいくらか取得する必要があります。
(Q6)申告要件
私は、自己資金と父から贈与を受けた1,110万円で省エネの住宅用家屋を取得しました。住宅取得等資金の贈与は非課税だと聞きましたが、申告をしなくても適用を受けることができますか?
A.無申告の場合は、適用を受けることができません。この制度は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに一定の書類を添付して、非課税の適用を受けるための贈与税の申告書を提出した場合に限り適用が受けられます。申告書の提出を失念すると、通常の暦年課税による贈与となりますので、210万円{(1,110万円-基礎控除額110万円)×特例税率30%-控除額90万円}の贈与税を納付する必要があります。
(文責:税理士法人FP総合研究所)