【No892】所得税の確定申告の留意点 ~令和4年分からの変更点について~
令和4年分の所得税の確定申告の受付が始まりました。そこで今回は、令和4年分以降の申告書様式の変更内容を中心に変更点についてご紹介します。
1.申告書様式の変更について
令和4年分以降、申告書A様式が廃止され、申告書B様式に一本化されました。そのため、A・Bの区分表記がなくなっています。
(1)第一表
①納税地の異動等があった場合の振替納税の継続
転居等で納税地に異動や変更があった場合には、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を異動又は変更前の所轄税務署長へ提出することになっていました。また、振替納税を利用している方で異動等により所轄税務署が変更となる場合において、異動後も振替納税を継続して利用するためには、異動後の所轄税務署に新たに口座振替依頼書を提出するか、若しくは同届出書にその旨を記載し提出することとされていました。
令和5年1月1日以降に転居等で所轄税務署に変更があった場合には、「振替継続希望」欄に○をすることでこれら届出書の提出が不要となります。令和4年分の確定申告で対象となる方は少ないと思われますが、○をつけ忘れてしまうと引落しができなくなりますので注意が必要です。また、納税が生じない又は還付の申告となり、振替納税とはならない場合でも○を付す必要があります。なお、確定申告書の提出を待たずに「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を異動・変更後の所轄税務署長へ提出することもできますので、心配な方は異動後速やかに提出しておくと安心です。
②公金受取口座の登録・利用
税額計算の結果、還付金を受け取ることになった方について、公金受取口座登録制度(緊急時の給付金等を受け取る口座として一人につき一口座、国に任意登録する制度です。)の登録申請又は利用が可能となります。
「還付される税金の受取場所」に記載した口座を新規で登録する場合には、「公金受取口座登録の同意」に○を記入します。記載した口座が公金受取口座として登録が可能な金融機関に該当するかは、予めデジタル庁のホームページでご確認ください。
一方、すでにマイナポータルで口座登録を行っている方については、「公金受取口座の利用」に○を記入すれば登録済の口座に還付金が振り込まれますので、「還付される税金の受取場所」の記入は不要です。なお、公金受取口座の登録状況等についてはマイナポータルでご確認ください。
③修正申告の場合における税額の記載
納付すべき税額を少なく申告していた場合には、修正申告書を提出する必要があります。これまでは「申告書第五表(修正申告書・別表)」に修正前の課税額を、正しく計算した課税額を「申告書B第一表」に記載して提出することとされていました。
令和4年分以降は「申告書第五表」が廃止され、正しく計算した「申告書第一表」「申告書第二表」を提出します。その上で、第一表に修正前の税額及び増加する税額を、第二表の「特例適用条文等」に修正する事項や理由を記載します。なお、分離課税所得がある場合には、これまでどおり「申告書第三表」の提出も必要です。
(2)第二表
納税義務者の同一生計配偶者又は扶養親族に退職所得がある場合、所得税と個人住民税で配偶者控除又は扶養控除の適用の有無が異なります。所得税では分離課税の退職所得を含め、個人住民税ではこれを含めない合計所得金額が48万円以下となるかどうかで判定します。今回の様式変更から、住民税での配偶者控除等の適用有無を把握するため、退職所得のある配偶者等の氏名や退職所得を除く所得金額を記載する欄が設けられました。
(3)収支内訳書
事業所得や不動産所得がある個人で白色申告を行う方は、その年分の収入や必要経費を記載した「収支内訳書」を提出することになっています。令和4年分以降、業務に係る雑所得(※)を有する者で、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える方においても、この収支内訳書の添付が必要となります。そのため、一般の営業等(白色申告)と区分するために選択欄が設けられました。
(※)業務に係る雑所得とは、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものをいい、具体的には原稿料、講演料、インターネットオークション等を利用し得た所得等が該当します。
2.その他の変更点
マイナンバーカードをお持ちの方は、スマートフォンでの確定申告がより便利になります。過去に「マイナンバーカード方式」で申告をされた方については、マイナンバーカードの読み取り回数がこれまでの3回から1回に短縮されます。また、これまで作成できなかった青色申告決算書や収支内訳書がスマートフォンでも作成できるようになります。
さらに、納付についても令和4年12月1日から「国税スマートフォン決済専用サイト」で、スマホアプリのPay払いができるようになりました。決済上限額は30万円で、決済手数料がかかりません。現在利用できるのは6種類となっており、多くの利用が期待されます。
(文責:税理士法人FP総合研究所)