【No870】ふるさと納税返礼品の経済的利益の価額と収入計上時期

 令和3年度のふるさと納税に関する現況調査結果が総務省から発表されました。ふるさと納税の受入額は全国で約8,302億円(前年の約1.2倍)、ふるさと納税に係る住民税控除適用者数は全国で約741万人(前年の約1.3倍)となっています。( https://www.soumu.go.jp/main_content/000827748.pdf

 年々利用者が増加しているふるさと納税ですが、その返礼品が所得税の「一時所得」の対象となることはご存知かと思います。今回はこの返礼品の『評価額の計算方法』と『収入計上時期』に関する裁決事例をご紹介します。

1. ふるさと納税返礼品に係る所得(経済的利益)

 ふるさと納税により特産品等を受けた場合の経済的利益は、所得税法上の一時所得に該当します。これは、所得税法上の非課税所得には該当せず、また、地方公共団体は法人とされていますので、法人からの贈与により取得するものと考えられるためです。一時所得の金額は次のように計算します。

その年中の一時所得に係る総収入金額 - その収入を得るために支出をした金額の合計額 - 50万円

 なお、懸賞や福引きの賞金品、生命保険の一時金や損害保険の満期払戻金なども一時所得に該当します。

2. 事実の概要

 Aは、複数の地方公共団体(平成29年は40団体、平成30年は73団体)に対し、ふるさと納税を行っており、ふるさと納税に係る返礼品の送付を受けていた。

 税務署は、Aの所得税等に係る調査において、各返礼品の名称・発送年月日・到着年月日・評価額などについて各地方公共団体へ照会を行った。ここで言う評価額は、各地方公共団体が各返礼品の調達に当たって現に支出した金額(返礼品調達価格)である。一部の地方公共団体は、返礼品の調達から発送に至るまでの業務を一括して外部事業者に委託し、費用を一括して支払っていたことから評価額に送料相当額が含まれている旨を回答している。

 上記の照会により得られた情報に基づき、各返礼品に係る経済的利益の価額が算定され、Aの一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額について所得税等の更正処分等が行われた。ここで言う経済的利益の価額は返礼品調達価格であるが、照会時に送料相当額が含まれている旨の回答があったもののうち一部のものについては、送料相当額を差し引いた後の金額とした。また、経済的利益の価額の収入すべき日については、㋑到着年月日の回答があったものは、その年月日、㋺発送年月日のみ回答があったものは、輸送に要する標準的な日数を考慮しその発送日の2日後の年月日、㋩到着年月日及び発送年月日の回答がなかったものは、各地方公共団体に再度確認するなどして認定した年月日を、それぞれ収入すべき日とした。

3. 審判所の判断

(1)経済的利益の価額 

 ふるさと納税制度における返礼品の提供がふるさと納税をした個人に対する謝礼であることからすれば、その謝礼の経済的利益の価額は、地方公共団体が謝礼(返礼品の調達・提供)のために支出した返礼品調達価額をその算定の基礎とすることが相当額である。そして、返礼品調達価額がAに供与されることとなる経済的利益の価額であると認められることから、送料相当額が含まれている旨の回答があった返礼品については、送料相当額を差し引かずに経済的利益の価額を算定するのが相当である。

(2)収入すべき時期 

 一時所得に係る総収入金額の収入すべき時期は、一般的にその支払を受けた日であることを踏まえると、返礼品に係る経済的利益の価額の収入すべき時期は、返礼品を贈与により受けた(取得した)日、具体的にはAの住所地等に到着した日(又は到着したと合理的に認められる日)の属する年分とするのが相当である。

4. 今後の対応

 令和3年度のふるさと納税に関する現況調査結果によれば、ふるさと納税の受入額に占める返礼品の調達に係る費用の割合が27.3%、返礼品の送付に係る費用の割合が7.7%となっています。上記裁決を踏まえて、調達と送付の両費用を合わせた35%を返礼品に係る経済的利益の価額の目安とすれば、50万円(特別控除額)÷35%=1,428,571円(年間のふるさと納税額)が注意すべき金額となります。また、返礼品を受領した日が収入に計上すべき時期となることから、年末近くに行ったふるさと納税については、受領日を確認する必要が生じることになります。

 年間142万円を超えるふるさと納税をされる方は少ないかもしれませんが、同じ年に生命保険の一時金など他の一時所得がある場合などは注意が必要です。

 

 

(文責:税理士法人FP総合研究所)