【No857】インボイス制度の概要
令和5年10月1日からの適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)の導入に向けて、令和3年10月1日から適格請求書発行事業者の受付が開始されています。
今回は、インボイス導入にあたっての主な内容を解説します。
1.インボイス制度とは
令和5年10月1日から仕入税額控除の方式としてインボイス制度がスタートします。この制度の下では、法定事項が記載された「帳簿」と「適格請求書」(いわゆる「インボイス」)を保存することによって、はじめて仕入税額控除を適用することができます。
なお、確定申告期限から7年間、これらを納税地等に保存し、税務調査においてこれらを提示することが求められます。
2.インボイスとは
「インボイス」とは、売手側が買手側に対して、適用税率や消費税額といった税情報を伝えるためのツールであり、かつ、記載された消費税額を売手側で納税していることを証明する書類をいいます。
売手側で納税した消費税額が買手側において仕入税額控除の対象となります。このインボイスが、買手側において適正な税額計算が行えるよう、その取引に係る税情報を買手側へ伝達する役目を担うこととなります。
また、売手側がインボイスを交付しようとする場合、インボイスを交付することができる事業者(適格請求書発行事業者)としての登録を受ける必要があります。そして、その事業者に対しては、必ず納税義務を負うことを条件に登録番号が交付されますから、売手側がその登録番号をインボイスに記載することによって、そのインボイスが納税証明書として成立することになります。
なお、インボイスには、登録番号等の法定事項を記載することが義務付けられますが、その様式自体は自由であることに特徴があります。
3.インボイス制度導入にあたって
(1)適格請求書発行事業者になるには
適格請求書発行事業者になるには、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録を受ける必要があります。
(2)インボイスの交付は「適格請求書発行事業者」のみ
インボイスは、税務署から登録を受けた「適格請求書発行事業者」しか交付することができません。また、適格請求書発行事業者は、課税事業者(=消費税の申告・納税義務あり)でなければその登録を受けることができません。結果として、免税事業者(=消費税の申告・納税義務なし)は、インボイスを交付することができません。
(3)インボイスは交付義務あり
売手側である適格請求書発行事業者は、買手側の課税事業者からの求めに応じてインボイスを交付する義務があります。
(4)インボイスには「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額」を明記
インボイスには、法定記載事項として新たに「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額」を記載することになります。
(5)電子インボイスは保存義務あり
インボイス制度導入後、売手側は電子データでインボイス(いわゆる「電子インボイス」)を提供することができるようになります。これを受け、買手側では、仕入税額控除を行うためには、この電子インボイスを保存する必要があります。
4.免税事業者の検討事項
(1)免税事業者から課税事業者になることの検討
免税事業者は、インボイスを発行できない(=免税事業者との取引により消費税を支払っても仕入税額控除を適用できなくなる。)ことから、取引をしてもらえない事態が想定されます。このことから、免税事業者は、適格請求書発行事業者になるため、課税事業者になるかどうかの検討をする必要があります。なお、取引先である買手側が免税事業者又は消費税の計算上、簡易課税制度を適用している場合、取引をしてもらえないという事態は生じないと思われます。
(2)免税事業者が課税事業者になるには
免税事業者が課税事業者になるには、事前に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があり、原則として2年間(調整対象固定資産の取得がある場合には3年間)は課税事業者が強制されることになります。
(注)免税事業者が、令和5年10月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、その登録日から自動的に課税事業者となる経過措置が設けられています。この場合、「消費税課税事業者選択届出書」の提出を省略することが可能となります。
(3)簡易課税制度の検討
「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者となる場合には、「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出も検討する必要があります。
(文責:税理士法人FP総合研究所)