【No856】ふるさと納税の控除漏れと対処方法

 ふるさと納税制度とは、都道府県・市区町村に対してふるさと納税(寄附)をすると、寄附額のうち2,000円を超える部分について、一定の上限まで、原則として所得税・個人住民税から控除されるものです。寄附金の使い道を選ぶことができるほか、寄附のお礼として自治体から返礼品を受け取ることができることが特徴です。言い換えれば、2,000円の自己負担で各自治体からの返礼品を受けることができる制度ですが、控除ができていなければこのメリットを享受できません。

 原則「確定申告」、特例「ふるさと納税ワンストップ特例制度」

 ふるさと納税で控除を受けるには、原則としてふるさと納税を行った翌年に確定申告で寄附金控除を行うというハードルがありますが、一定要件を満たす場合には確定申告をせずに住民税から控除が受けられる「ふるさと納税ワンストップ特例」(寄附金税額控除に係る申告特例)制度が平成27年4月以降の寄附分から開始し、確定申告をしないサラリーマンにも利用しやすい制度になりました。

(1)ワンストップ特例制度の利用要件(次の①、②両方に該当する方)

  ① 勤務先で年末調整を行う給与所得者等で、確定申告をしないと見込まれる方

   ※ 例えば、個人事業者や不動産所得のある方で確定申告を要する方、給与の収入金額が2千万円を超える方、

   サラリーマンでも給与所得等以外の所得金額の合計額が20万円を超える方などは対象外です。

  ② ふるさと納税をする自治体の数が5までの方

(2)ワンストップ特例制度を利用するための手続

 ワンストップ特例制度を利用するには、寄附先の各自治体へ「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」(マイナンバーと本人確認のための書類を添付)を、寄附の翌年の1月10日までに提出する必要があります。

 (注)同一の自治体へ複数回寄附した場合であっても、その回数分の申請書の提出が必要です。

 ふるさと納税の控除漏れ

 ふるさと納税をしても控除がされなければ、寄附により返礼品(返戻割合は寄附額の3割以下)を取得、つまり、寄附額の7割以上を自己負担することになります。想定どおりに控除がされているか否かは、住民税の納税通知書(または勤務先から6月頃に渡される「住民税決定通知書」)などで控除金額を確認すると良いでしょう。

 控除漏れが発生する理由として、次のようなものが考えらえます。

(1)ワンストップ特例の要件から外れてしまった

 ワンストップ特例制度はあくまでも特例であるため、申請書を提出していた場合であっても、所得税の確定申告書または住民税の申告書が提出された、寄附先の自治体数が5を超えたなど、要件から外れたときには適用されません。

 ※ 不動産の譲渡所得や、株式の譲渡益・譲渡損、医療費控除等は年末調整では対応できません。

  これらの申告内容がある場合には、ワンストップ特例制度を使わずに、確定申告書を提出するようにしてください。

 ※ 住所地の役所によっては、ワンストップ特例制度の適用から外れた旨の通知書が送られてくる場合もあるようです。

(2)ワンストップ特例の申請書の提出にミスがあった

 申請書の提出漏れや不備、提出期限に間に合わなかった場合などは寄附先の自治体で申請書が受理されません。

 ※ 引越しで住所変更があった場合などには「変更届出書」を寄附の翌年の1月10日までに提出する必要があります。

(3)ワンストップ特例を利用しておらず、確定申告書も提出していない

(4)確定申告書を提出したが、寄附金控除に漏れがあった

 控除漏れがあった場合の対処方法

(1)確定申告の申告期限までに猶予がある場合

 ⇒ 申告期限内までに、寄附金控除を適用した確定申告書を提出

 ※ 申告書を提出済みの場合でも、申告期限内に再度申告書を提出すれば最後に提出されたものが申告内容となります。

(2)申告期限までに確定申告書を提出しなかった場合

 ⇒ 申告期限後に、寄附金控除を適用した確定申告書を提出

(3)確定申告書を提出したが、寄附金控除を忘れていた場合

 ⇒ 申告期限後に、寄附金控除を追加適用する場合は更正の請求書を提出

 ※ 更正の請求書は国税庁ウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」でも作成可能です。

(注)更正の請求書は法定申告期限から原則5年間、還付申告書はその年の翌年1月1日から5年間提出できます。

  申告内容が還付とならない場合には過少申告加算税や延滞税などの負担が生じる場合がありますので注意が必要です。

 返戻品は一時所得の課税対象

 ふるさと納税による返礼品(経済的利益)は、所得税(一時所得)の課税対象となります。一時所得の計算過程には50万円の特別控除があり、ふるさと納税での返戻割合は3割以下と地方税法(令和元年6月1日以降の寄附)に定められていますので、500,000円(特別控除額)÷ 30%=1,666,666円(年間の寄附額)が注意すべき金額となります。年間約166万円超のふるさと納税をされる方は非常に少ないと思いますが、同じ年に他の一時所得(生命保険の満期返戻金受取りなど)がある場合は、合算して特別控除額を上回らないか否かの確認が必要です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)