【No854】所得税に関する申告書等情報取得サービスの開始
個人が書面等により提出した所得税の確定申告書等についてオンライン上で確認することができる「申告書等情報取得サービス」が令和4年5月23日から開始されました。
これまでも、パソコンを利用して申告している場合にはe-Tax上で過去の申告内容を閲覧することができました。しかし、スマホ、タブレット、書面による申告の場合には、書面手続による「申告書等閲覧サービス」を利用する必要があり、オンラインでの閲覧はできませんでした。
また、申告書等の写しを取得するためには別途有料の開示請求手続を行う必要がありますが、この制度も書面による手続が必要であり、取得までに約2~3週間ほどかかります。
そのため、所得税に限定はされますが、「申告書等情報取得サービス」の開始により、今までよりも手軽にかつ迅速に過去の申告書の閲覧・イメージデータの取得ができるようになりました。今回はこの制度について紹介します。
1. 制度概要
国税当局は税務行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進策の一つとして、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」という将来構想を掲げており、その一環として、e-Tax上で所得税申告書等のデータの閲覧・取得を行うことができる「申告書等情報取得サービス」が開始されました。
・申請方法
申請はパソコン、スマホなどからe-Tax上で行います。なお、申請にあたってはマイナンバーカードによるログイン及び電子署名が必要となります。
・データ取得までにかかる期間
申請からデータ取得までには、数日(土・日・祝日等の税務署の閉庁日を除く。)ほどかかります。
なお、データはPDF形式でe-Taxのメッセージボックスに格納された後ダウンロードできますが、ダウンロード可能期間は格納から180日以内となります。
・対象書類の範囲
現在取得できるのは過去に提出した直近2年分の「確定申告書」、「収支内訳書」、「青色申告決算書」ですが、来年以降は対象書類の範囲が直近3年分まで広がります。
・手数料
無料で取得することができます。
・直近年分の取得申請について
直近年分の申告書等に関する取得申請は原則として翌年5月1日以降に可能となります。
つまり、×3年分の確定申告書(×4年3月15日申告期限)は、×4年5月1日以降に取得可能となります。
(ただし、法定申告期限後に申告書等を提出している場合には、申請できるまでしばらく時間がかかる可能性があります)
・同一年で複数の申告を行っている場合
同一年分で複数の申告(訂正申告や修正申告)を行っている場合には、最新のものが対象となります。
・申請の代理について
申請にあたっては申請者本人のマイナンバーカードが必要となるため、代理人や相続人による取得申請はできません。
2. 税務行政のDX推進
「申告書等情報取得サービス」以外にも、個人や法人がe-Tax上で登録した氏名・住所・メールアドレス等の情報や確定申告に必要な特例適用等の情報を「アカウント情報」としてe-Tax上で体系的に表示・確認できるようにシステムの見直しがされているなど、税務行政におけるDX推進は今後も進められていくと予想されます
(文責:税理士法人FP総合研究所)