【No841】成年年齢の引下げによる影響について
民法の成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」が令和4年4月1日から施行されました。
民法の定める成年年齢は、単独で契約を締結することができる年齢という意味と、親権に服することがなくなる年齢という意味を持つものですが、この年齢は明治29年に民法が制定されて以来、20歳と定められてきました。これは、明治9年の太政官布告を引き継いだものといわれています。
成年年齢の見直しは、明治9年の太政官布告以来約140年ぶりであり、18歳・19歳の若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備するとともに、その積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義を有するものと考えられます。
今回は、成年年齢の引き下げに伴う影響などについて解説します。
1.成年年齢引き下げの背景
近年、憲法改正国民投票の投票権年齢や、公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められ、国政上の重要な事項の判断に関して、18歳・19歳の方を大人として扱うという政策が進められてきました。
こうした政策を踏まえ、市民生活に関する基本法である民法においても、18歳以上の人を大人として取り扱うのが適当ではないかという議論が行われるようになりました。
2.成年年齢はいつから18歳になるのか
2022年4月1日の時点で18歳以上20歳未満の方(2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの方)は、その日に成年に達することになります。
2004年4月2日生まれ以降の方は、18歳の誕生日に成年に達することになります。
3.18歳で何ができるようになるのか
成年年齢の引下げによって、18歳・19歳の方は、親の同意を得ずに様々な契約をすることができるようになります。例えば、携帯電話を購入する、一人暮らしのためのアパートを借りる、クレジットカードを作成する、ローンを組んで自動車を購入するといったことができるようになります。
また、相続の場合の遺産分割協議についても、これまでは18歳・19歳の方は行為能力がないことから特別代理人を選任する必要がありましたが、今後は単独で遺産分割協議に参加することができるようになります。
なお、2022年4月1日より前に18歳・19歳の方が親の同意を得ずに締結した契約は、改正民法の施行後も引き続き取り消すことができます。
民法の成年年齢が18歳に引き下げられても、お酒やたばこに関する年齢制限については20歳のまま維持されます。また、公営競技(競馬、競輪、オートレース、モーターボート競走)の年齢制限についても20歳のまま維持されます。これらは健康被害への懸念やギャンブル依存症対策などの観点から、従来の年齢を維持することとされました。
4.女性の婚姻開始年齢の改正
女性の婚姻開始年齢は16歳と定められており、18歳とされる男性の婚姻開始年齢と異なっていましたが、今回の改正では女性の婚姻年齢を18歳に引き上げ、男女の婚姻開始年齢を統一することとしました。
婚姻開始年齢に男女差が設けられていたのは、男女間で心身の発達に差異があるためであるとされています。しかし、社会・経済の複雑化が進展した今日では、婚姻開始年齢の在り方に関しても、社会的・経済的な成熟度をより重視すべき状況になっています。そして、社会的・経済的な成熟度といった観点からは、男女間に特段の違いはないと考えられることから、婚姻開始年齢における男女の取扱いの差異を解消することとされました。
5.税制上の影響
相続税の計算における未成年者控除については、これまでは相続人の年齢が「20歳未満」であることが要件でしたが、今後は「18歳未満」に引き下げられることになります。
また、贈与の場合の各種特例として、直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例、相続時精算課税の選択、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置、直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置、非上場株式等についての贈与税の納税猶予などについては、これまでは受贈者の年齢が「20歳以上」であることが要件でしたが、すべて「18歳以上」に引き下げられます。
(文責:税理士法人FP総合研究所)