【No840】令和2事務年度 所得税の調査等の状況(一部抜粋)

 今回は、令和3年11月に国税庁から公表された、「令和2事務年度(令和2年7月~令和3年6月)所得税及び消費税調査等の状況」の内、所得税の調査結果について一部抜粋してご紹介します。

1 所得税の調査等の状況

 新型コロナウイルス感染症の影響により実地調査の件数は大幅に減少したものの、簡易な接触(納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による⾯接を行い、申告内容を是正するもの)による調査が増加しました。また、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案が優先して調査された結果、1件当たりの追徴税額が増加しました。

※実地調査(特別調査・一般調査)とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施されるものです。これに対し、実地調査(着眼調査)とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。

2 海外投資等を行っている個人に対する調査状況

 経済社会の国際化に伴い、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人が増加していることに対処するため、国税庁は富裕層だけでなく、これらの個人に対する調査を積極的に行っています。海外投資や海外資産に関する情報は、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用して、行われます。

 調査対象の43.6%を海外投資(海外の不動産、証券などに対する投資。預貯金等の海外での蓄財を含む)が占めており、海外投資の1件あたり申告漏れ所得金額は2,579万円(海外投資等の申告漏れ所得金額は2,239万円、実地調査(特別・一般)全体の申告漏れ所得金額は1,480万円)と高額になっています。

3 事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

 以下は、事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額である業種の順位と1件当たりの申告漏れ所得金額等の一覧です。平成23事務年度から、上位1・2位を風俗業・キャバクラが占めていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、プログラマーが1位となりました(犬の小売業が8位に入っているのも、新型コロナウイルス感染症の影響によるものです)。これら上位の業種は、他の業種と比べ調査率が高くなることが考えられます。

 その他、無申告者に対する調査も、実地調査のみならず簡易な接触を積極的に活用し調査が行われています(2,993件、1件当たりの申告漏れ所得金額は2,565万円、追徴税額292万円)。

(文責:税理士法人FP総合研究所)

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