【No838】遺産を国や地方公共団体に寄附した場合の相続税の非課税について
相続人等が相続や遺贈により取得した財産を国などに寄附した場合において、一定の要件を満たしたときは、その寄附した財産については相続税が非課税となります。今回はその非課税となる取扱いについてご紹介します。
【1】内容(措法70①)
相続又は遺贈により財産を取得した者が、その取得した財産をその取得後その相続又は遺贈に係る相続税の申告書の提出期限までに、①国や②地方公共団体又は③一定の公益法人等に寄附した場合には、その寄附した財産の価額は、その相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入しないこととされており、非課税となります。
【2】一定の公益法人等とは(租法70⑩、措令40の3)
【1】の寄附先である一定の公益法人等とは、教育若しくは科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものをして、下記に掲げる法人のことをいいます。
(1) 独立行政法人、国立大学法人及び大学共同利用機関法人
(2) 地方独立行政法人のうち一定の業務を主たる目的とするもの
(3) 公立大学法人
(4) 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団及び日本赤十字社
(5) 公益社団法人及び公益財産法人
(6) 私立学校法第三条に規定する学校法人で一定のもの
(7) 社会福祉法人及び更生保護法人
(8) 認定特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法第2条①に規定する特定非営利活動に係る事業に関連する寄附をした場合に限る)
【3】申告する場合の注意点(措法70⑤、措規23の3②)
国等に対して相続財産を寄附した場合の相続税の非課税の規定を受けようとする場合には、その適用を受けようとする者の相続税の申告書に、①この規定の適用を受ける旨を記載し、かつ、②次の(1)から(3)に掲げる書類を添付して、③相続税の申告書の提出期限までに納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
(1) 寄附(贈与)した財産の明細書(相続税申告書第14表)
(2) 国若しくは地方公共団体又は上記【2】に掲げる一定の公益法人等の、①寄附を受けた旨、②その寄附を受けた年月日及び③寄附を受けた財産の明細及び④その法人の寄附を受けた財産の使用目的を記載した書類
(3) その寄附を受けた法人が上記【2】(2)又は(6)に掲げる法人である場合には、これらの法人に該当するものであることについて、設立団体又は所轄庁の証明書類
なお、相続税の申告書にこの規定の適用を受ける旨の記載がないこと又は上記書類の添付がないことについての宥恕規定は設けられていません。そのため、国や地方公共団体などの寄附先に寄附の意思表示をしたとしても、申告期限まで手続が間に合わない場合や、上記書類を添付することができない場合には、適用を受けることはできませんので、注意が必要です。
【4】「相続又は遺贈により取得した財産」とは(措通70-1-6)
この非課税の規定の適用がある「相続又は遺贈により取得した財産」とは、相続又は遺贈により取得した財産そのものをいいます。例えば、相続又は遺贈により取得した有価証券を譲渡し、その譲渡代金である現金を寄附した場合には、相続又は遺贈により取得した有価証券そのものを寄附しているとは言えないため、この非課税の規定の適用はありません。
【5】一定の公益法人等に寄附をする場合の注意点(措法70②、措通70-1-3)
【2】に掲げる一定の公益法人等で寄附を受けたものが、その寄附があった日から二年を経過した日までに、その一定の公益法人等に該当しないこととなった場合、又はその寄附により取得した財産を同日においてなおその公益の目的とする事業の用に供していない場合には、この非課税の適用はありません。
また、【2】に掲げる一定の公益法人等を設立するための寄附については、この非課税の適用はありません。
(文責:税理士法人FP総合研究所)