【No821】令和2年分の相続税の申告及び調査状況について

国税庁から令和2年分の「相続税の申告事績の概要」と「相続税の調査等の状況」が発表されました。

 https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf

 https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf

1.相続税の申告事績の概要(令和2年11月~令和3年10月)

 死亡者数である約137万人のうち、相続税の申告書を提出し納税した者が約12万人となっています。死亡者数に占める相続税の課税割合は8.8%となっており、相続税の基礎控除額の引き下げが行われた平成27年以降、横ばいで推移しています。被相続人1人当たりでは、課税価格が約1億3,600万円・税額が約1,700万円となっています。また、近年の傾向として、相続財産の金額の構成比で土地・家屋の割合が減少傾向、現金・預貯金の割合が増加する傾向が見られます。しかしながら、換価処分が困難な土地・家屋の占める割合は約40%となっており、相続税の納税資金の確保や対策が重要となってきます。

2.相続税の調査等の状況(令和2年7月~令和3年6月)

 新型コロナウイルス感染症の影響により実地調査件数は前年と比較して半減していますが、大口・悪質な不正が見込まれる事案を優先して実地調査を行った結果、申告漏れ(修正申告)の割合は8割を超え、1件当たりの追徴税額は943万円(過去10年で最高額)となっています。令和2年の特徴として、簡易な接触による調査(文書、電話による連絡又は来所依頼による面接)を大幅に増やしている点があり、件数は前年の約1.5倍となっています。ただし、1件当たりの追徴税額は47万円(前年比98%)となっており、単純な計算ミスや記載間違いなどの事案に対して行ったものと思われます。また、海外資産関連事案に係る申告漏れ等の非違件数は96件(前年比64.4%)となっていますが、租税条約等に基づく情報交換(CRS情報:共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)等が積極的に行われていますので、海外財産の計上漏れにも注意が必要です。

 申告漏れ財産の金額の構成比では、約4割が金融資産(現金・預貯金・有価証券)となっています。これは評価方法の解釈の違いが焦点となりやすい不動産よりも、金額がはっきりしていて計上漏れを指摘しやすい金融資産(特に家族名義の預貯金・株式等)が重点的に調査された結果と思われます。

【預貯金照会業務のオンライン化】

 令和3年10月から税務署における金融機関への預貯金照会業務がオンライン化されました。従来は照会文書や回答書は原本(紙)での保管となっており、非常に煩雑で回答が出るまでに概ね2週間かかっていましたが、今回のオンライン化により大幅に短縮されたようです。今までは照会に至らなかったケースでも今後は簡単に照会されるケースが増えると思われます。

 今後、マイナンバー利用による情報の一元管理やAI・データ分析の活用なども進んでいくことが予想されます。個人の様々な情報が行政機関により迅速かつ的確に把握される時代に変わりつつあることを認識し、今後どのような運用が行われるのかを注目する必要があると思われます。

(文責:税理士法人FP総合研究所)

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