【No816】空き家の3,000万円控除に関する質疑応答事例
先日、国税庁ホームページの質疑応答事例が更新され、21事例(所得税3問、源泉所得税1問、譲渡所得7問、財産の評価1問、法人税5問、消費税3問、印紙税1問)が追加されました。
譲渡所得については、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特例(空き家の3,000万円控除)に関する取り扱いが多く示されています。今回はその内容について紹介します。
1.被相続人居住用家屋の敷地を分筆後、同年中に全てを譲渡した場合
【照会要旨】
①相続により被相続人の自宅家屋とその敷地を取得
②当該家屋を取壊した後、当該敷地を2筆に分筆(A土地・B土地)し、本年5月にA土地を2,000万円で譲渡し、同年11月にB土地を1,800万円で譲渡
【回答要旨】
同一年中に両土地を譲渡しているため、空き家の3,000万円控除の適用可能(控除額は合計で3,000万円が限度)。
なお、A土地とB土地の譲渡が2年にまたがる場合はいずれかの年分のみ適用可能となり、一度特例を適用して申告した後に他の年分に選択替えをしたり、適用しないことを選択した後にその年分で適用する選択を行うことはできません。
2.被相続人居住用家屋以外の建物等を取り壊さない場合
【照会要旨】
①相続により被相続人の自宅家屋とその敷地のほか、被相続人所有の車庫・倉庫を取得
②当該敷地の譲渡にあたって、自宅家屋は取り壊し、車庫と倉庫は取り壊さずに譲渡する旨の売買契約により譲渡
【回答要旨】
自宅家屋、車庫及び倉庫の床面積の合計のうち、自宅家屋の床面積の占める割合に相当する部分について、空き家の3,000万円控除の適用可能。
⇒本特例の対象となる家屋とは「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる一の建築物」であるため、本事例においては、自宅家屋の全部取り壊しを行えば、既存の車庫や倉庫などが存在していたとしても、適用可能となります。(ただし、上記のとおり、敷地のうち自宅家屋の床面積の占める割合に相当する部分のみが適用対象です)
3.売買契約後に被相続人居住用家屋が取り壊される場合(引渡日ベースで申告する場合)
【照会要旨】
①相続により取得した被相続人の自宅家屋とその敷地を譲渡するため、6月に売買契約を締結
②契約締結にあたり、買主の要望で「当該土地上の建物を7月までに売主において取り壊し、更地にして引き渡す」旨の特約条項を売買契約書に記載して譲渡
【回答要旨】
契約通り売主が自宅家屋を取り壊し、引渡日ベースで申告する場合には、空き家の3,000万円控除の適用可能。
⇒資産の譲渡の時期は、原則として資産の引渡日とされ、納税者の選択により、契約効力発生日(契約締結日)とすることができます。
したがって、引渡日の属する年分の譲渡として申告する場合には、引渡時までに被相続人の自宅家屋が取り壊されていれば、適用要件を満たすことになります。
4.売買契約後に被相続人居住用家屋が取り壊される場合(契約日ベースで申告する場合)
【照会要旨】
①相続により取得した被相続人の自宅家屋の敷地を譲渡するため、本年12月に売買契約締結
②売買契約の締結にあたり、「当該土地上の建物を来年2月26日までに売主において取り壊し、更地にして引き渡す。」旨の特約条項を売買契約書に記載して譲渡
③確定申告は、契約日ベースで本年中に行う
【回答要旨】
空き家の3,000万円控除の適用不可
⇒本特例の適用にあたっては、納税者が選択した譲渡時期において、適用要件が充足されているかを判定します。
そのため、契約日ベースで申告する場合、契約締結時までに建物の取壊しを行う必要があります。
(文責:税理士法人FP総合研究所)