【No810】遺言書作成のポイント ~秘密証書遺言の特徴~

 資産税FP News №806でご紹介した遺言書の種類の中から秘密証書遺言の内容についてご紹介します。

 秘密証書遺言は、利用件数は少ないですが、公正証書遺言の作成費用を抑えたいが全文を自書することが困難な方などに用いることができます。

1.秘密証書遺言の作成及び検認

(1)自筆以外でも作成可能

 秘密証書遺言は、自書以外に、パソコンや代筆での作成が認められています。だだし、署名及び押印については遺言者本人が行う必要があります。

 印鑑については、認印でも構いませんが自筆証書遺言と同様なるべく実印で押印することが望ましいと思われます。

 なお、遺言書の訂正については自筆で行わなければならず、代筆は認められておりませんので注意が必要です。

(2)封印

 遺言書を作成しましましたら、遺言者が遺言書を封に入れ、遺言書に押印した印を用いて封印します。

(3)公証

 遺言書を封印しましたら、公証人役場(公証役場へ出向くことが出来ない場合には、公証人に出張してきてもらうことも可能です。)で遺言者が、公証人1人及び証人2人の前で事前に作成し封印された遺言書を提示し、遺言者自らの遺言書である旨、及びそれが代筆により作成された場合には代筆者の氏名及び住所を申述します。

 これに対し、公証人は、遺言書が提出された日付及び遺言者等の申述内容を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名及び押印することとなります。

 なお、秘密証書遺については公証人の費用は決まっており11,000円となっています。

(4)保管

 秘密証書遺言は公正証書遺言と違い、公証人役場では保管されず遺言書の原本は本人が保管することとなります。

(5)相続が発生した場合

 相続が発生した場合、秘密証書遺言については、家庭裁判所での検認が必要となってきます。これは、公証人が遺言書の内容には一切関わっていないためです。

2.無効行為の転換

 無効行為の転換とは、当事者が意図したとおりの法律行為が生じない場合(無効)に、他の法律行為の要件をみたしているのであればその効力を認めることをいいます。

 秘密証書遺言の場合、遺言書に押印した印と封印の際に用いた印が違った場合、秘密証書遺言としては無効となりますが、これが自筆証書遺言の要件を満たしている場合、自筆証書遺言としての効力が認められます。

3.秘密証書遺言の長所と短所

 秘密証書遺言の長所と短所について簡潔にまとめましたので、ご確認ください。

4.作成にあたっての注意事項

 秘密証書遺言は、基本的には本人が作成し内容を秘密にできるため、法的に有効でない遺言になってしまう可能性があります。法的に有効でない遺言とは、遺言の形式を守れていなかったり、財産の分け方の指示が不明確で曖昧な文章になっていたりする遺言のことです。

 ですから、秘密証書遺言の作成にあたって不安なときは、内容をあらかじめ法律に精通した専門家に確認してもらうこともご検討ください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)