【No800】不動産小口化商品について

 近年、相続対策として「不動産小口化商品」が注目を集めています。今回は相続対策として考えたときに「不動産小口化商品」にはどのようなメリット・デメリットがあるかなどをご紹介します。

1.不動産小口化商品とは

 不動産小口化商品とは、特定の不動産を一口当たり数万円や数百万円などに小口化して販売し、賃料収入等を所有口数により出資者に分配するという商品です。例えば、都市部の優良不動産を購入するとなると本来は多額の資金が必要となりますが、不動産小口化商品であれば少額から投資が可能であり、また管理運営などの手間もかからないという利点があります。

 なお、一口に不動産小口化商品と言っても、不動産特定共同事業法に基づく小口化商品(任意組合型、匿名組合型、賃貸型)や、不動産信託受益権を活用した小口化商品があります。

2.相続対策としての不動産小口化商品

(1)メリット

① 相続財産の圧縮が期待できる(匿名組合型を除く)

 例えば相続税申告において、現金1億円を保有していた場合には財産評価においても1億円となりますが、不動産小口化商品の場合は不動産として評価されることから、評価差額により相続税の節税効果が期待できます。

 建物の相続税評価額は一般に時価相当額の70%相当とされる固定資産税評価額を基に評価され、賃貸用であればさらに30%の評価減が認められています。土地はおおむね時価の80%相当とされる路線価を基に評価され、賃貸用建物の敷地の場合はさらに一定の評価減が認められています。

 また、税務上の特例である「小規模宅地等の特例」や地積規模の大きな宅地の評価の適用を受けることができるため、特例の適用要件を満たすことができればさらなる財産の圧縮が見込まれます。

匿名組合型の小口化商品は不動産として評価されず、相続税の節税効果が見込まれないため、相続税の対策として不動産小口化商品の購入を検討する際にはご注意ください。

② 円滑な遺産分割が可能になる

 通常の不動産の場合、遺産分割において不動産を相続人で共有すると運用時に全員の合意が必要になるなどのデメリットがありますが、不動産小口化商品の場合は一口ごとに分割することが可能なため、円滑な遺産分割が進めやすいというメリットがあります。

(2)デメリット

① 自己資金での投資が必要(融資を受けることが難しい)

 通常の不動産投資であれば、購入する不動産を担保に融資を受けられる可能性がありますが、不動産小口化商品の場合、投資不動産を担保に融資を受けることができません。そのため、自己資金での投資が必要となります。

 また、商品によっては中途解約(売却)することに制限を設けられていたりするため、緊急時にすぐに換金ができない可能性もあります。不動産小口化商品へ投資する場合には、余剰資金を用いて投資することが望ましいと思われます。

② 不動産の価額減少リスク

 景気が悪化し市場価値が下がった場合、不動産の価額も下落します。不動産の価額が下がることで相続税の節税効果が見込めたとしても、将来の売却価額が下がることによって、財産額が目減りしてしまうリスクがあります。

3.その他の特徴

 相続対策以外における特徴は以下のようなものがあります。

① 都市部の優良な高額不動産への投資が可能

 上記1でも記載しましたが、少額から投資が可能なため、通常では手の出せないような都市部の高額な不動産などへの投資も可能となります。

② 利回りが通常の不動産投資に比べて低い

 実際の不動産投資に比べ、任意組合等に運用報酬を支払う必要があり、コストがかかる傾向にあります。そのため、運用利回りは通常の不動産投資に比べて低くなる可能性があります。

③ 購入機会が限られている

 不動産小口化商品は現状商品数が少なく、購入機会が非常に限られているため、相続対策を行いたいタイミングで希望どおりの商品が見つからない可能性があります。また、希望どおりのものが見つかった場合でも投資の希望者が多い場合、申し込んでも契約できない可能性があります。

④ 分配金に係る所得税

 不動産小口化商品の分配金については、匿名組合型の場合は雑所得、それ以外の場合は不動産所得となります。不動産所得となる場合は青色申告特別控除などの適用が可能になるなどのメリットがありますが、当該不動産から損失が生じたとしてもその損失の金額は生じなかったものとみなされ、他の不動産所得との損益通算ができないというデメリットがある点にもご留意ください。

 不動産小口化商品は少額からの投資が可能で、税法上の不動産の特例制度の適用を受けることができる商品となっており、相続財産の圧縮効果が高いことからも今後商品数が増えてくることが予想されます。投資家にとっては相続対策の選択肢が広がることになりますので、自身の状況にあわせて相続対策を選択することが重要です。ただし、現時点で不動産小口化商品に限定して認められている税法上の特例などはなく、実際に相続が発生するまでに税制が変更される可能性もありますので、今後の動向を注視する必要があります。

(文責:税理士法人FP総合研究所)