【No795】土地の評価で見落としがちな減額要素⑥ ~土壌汚染地及び埋蔵文化財包蔵地の評価~
土地の評価における減額要素には様々なものがあります。路線価方式による土地の評価において、路線価は標準的な大きさの矩形の宅地を前提に設定されており、個々の土地の状況に応じた減額要素は考慮されていません。
不動産の取引の際に問題となる土壌汚染地や埋蔵文化財包蔵地については、土地の評価においても斟酌されることとされています。
1.土壌汚染地の評価
土壌汚染地の評価方法については財産評価基本通達には明記されていません。しかし、平成15年に土壌汚染対策法が施行されたことに伴い、「今後、土壌汚染地であることが判明し、相続税等の課税上、問題となる事例が生ずることが考えられる」との理由から、平成16年7月5日に土壌汚染地の評価方法の基本的な考えを取りまとめた「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」(資産評価企画官情報第3号)が公表され、土壌汚染地について下記の算式により評価することが示されました。
なお、上記の情報は保存年限が経過済みであるため、現在は国税庁HPにおいて閲覧することができませんが、課税実務上の取り扱いについては、現在も踏襲されていると思われます。
A.浄化・改善費用
土壌汚染の除去、遮水工封じ込め等の措置を実施するための費用
⇒土地の相続税評価額が地価公示価格の80%であることとの均衡から控除すべき浄化・改善費用見積額の80%相当額とされています。
B.使用収益制限による減価
上記Aの措置のうち土壌汚染の除去以外の措置を実施した場合に、その措置の機能を維持するための利用制限に伴い生ずる減価。
⇒一定の減価割合(減価相当額)を定めることは困難であることから、個別に検討する必要があります。
C.心理的要因による減価(スティグマ)
土壌汚染の存在(あるいは過去に存在した)に起因する心理的な嫌悪感から生ずる減価。
⇒Bと同様に、一定の減価割合(減価相当額)を定めることは困難であることから、個別に検討する必要があります。
なお、上記方法により評価することができるのは「課税時期において評価対象地の土壌汚染の状況が判明している土地」であり、土壌汚染の可能性があるなどの潜在的な段階では、上記方法により評価することはできません。
2.埋蔵文化財包蔵地の評価
(1)埋蔵文化財包蔵地とは
埋蔵文化財包蔵地とは、石器、土器、貝塚、古墳その他文化財が埋蔵されている土地のことをいい、埋蔵文化財の存在が知られている土地を「周知の埋蔵文化財包蔵地」といいます。
周知の埋蔵文化財包蔵地内で土木工事などの開発事業を行う場合(文化財保護法の規定により事前の届出が必要)において、埋蔵文化財の保護上特に必要があるときは、開発前における埋蔵文化財の記録を作成するため、文化庁長官の指示により、発掘調査を実施することがあります。
(2)発掘調査費用負担にかかる補正
発掘調査が必要となる場合、その費用は原則的に所有者(事業者)負担となることから、当該土地の相続税評価上、所有者が負担すべき発掘調査費用に係る補正を行うことができると考えられます。
補正方法について財産評価基本通達では定められていませんが、平成20年9月25日の公表裁決において土壌汚染地の評価方法を準用することが相当である旨の判断がなされ、以下の算式により埋蔵文化財包蔵地の相続税評価額を計算しています。
※1土壌汚染地の浄化・改善費用と同様に、負担すべき発掘調査費用見積額の80%相当額を控除
※2土壌汚染地のような使用収益制限、心理的要因による減価は認められないため、発掘調査費用分についてのみ考慮
なお、上記評価方法の適用にあたっての前提条件として、対象地に接面する路線に付されている路線価が周知の埋蔵文化財包蔵地であることを考慮して評定されていないことが必要とされます。
(文責:税理士法人FP総合研究所)