【No793】土地の評価で見落としがちな減額要素⑤ ~土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価~

 土地の評価における減額要素には様々なものがあります。路線価方式による土地の評価において、路線価は標準的な大きさの矩形の宅地を前提に設定されており、個々の土地の状況に応じた減額要素は考慮されていません。

 近年、全国各地で豪雨や台風による土砂災害の危険性が高まっており、土砂災害特別警戒区域の指定件数が増加しています。このような状況を受け、国税庁は平成31年1月1日以後における土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価において一定の減額補正を行うこととする財産評価基本通達の改正を行っています。

1.土砂災害特別警戒区域とは

 土砂災害特別警戒区域とは、土砂災害警戒区域(土砂災害が発生した場合、住民の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域)のうち土砂災害が発生した場合、建築物に損壊が生じ住民の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為の制限や居室を有する建築物の構造が規制される土地の区域をいいます。

2.土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価方法

 近年、土砂災害特別警戒区域の指定件数が増加していることを踏まえ、財産評価基本通達に、「20-6 土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価」の規定が新設され、平成31年1月1日以後に開始した相続、遺贈又は贈与により取得した土地の評価については、新たな減額規定が適用されるようになりました。

 土砂災害特別警戒区域内となる部分を有する宅地の価額については、その宅地のうちの土砂災害特別警戒区域内となる部分が土砂災害特別警戒区域内となる部分でないものとした場合の価額に、その宅地の総地積に対する土砂災害特別警戒区域内となる部分の地積の割合に応じて、右の「特別警戒区域補正率表」に定める補正率を乗じて計算した価額によって評価され、具体的な計算例は下記のとおりです。

(出典:国税庁資産評価企画官情報・資産課税情報)

 なお、土砂災害特別警戒区域は、基本的には地勢が傾斜する地域に指定されることから、土砂災害特別警戒区域内にある宅地にはがけ地を含む場合もあると考えられるところから、「がけ地補正率」の適用がある場合(財産評価基本通達20-5)においては、「特別警戒区域補正率」に「がけ地補正率」を乗じて得た数値を特別警戒区域補正率(小数点以下2位未満切捨て)とします。ただし、その最小値は0.50とされています。

3.倍率地域に所在する土砂災害特別警戒区域内にある宅地

 土砂災害特別警戒区域内の宅地の固定資産税評価額の算定については、土砂災害特別警戒区域の指定による土地の利用制限等が土地の価格に影響を与える場合には、当該影響を適正に反映させることとされており、土砂災害特別警戒区域に指定されたことに伴う宅地としての利用制限等により生ずる減価は、すでに固定資産税評価額において考慮されていると考えられることから、倍率地域に所在する土砂災害特別警戒区域内にある宅地については、「土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価」の適用対象とされません。

4.市街地農地等への適用関係

 市街地農地等については、その農地等が宅地であるとした場合を前提として評価(宅地比準方式により評価)することとされているところから、市街地農地等が土砂災害特別警戒区域内にある場合には、「土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価」の適用対象となります。

(文責:税理士法人FP総合研究所)