【No708】自筆証書遺言書保管制度について
先日、「法務局における遺言書の保管等に関する省令」が交付され、令和2 年7 月10 日から開始する「自筆証書遺言書 保管制度」の詳細が公表されました。
1.自筆証書遺言書保管制度とは
自筆証書遺言に係る遺言書は自宅で保管されることが多く、紛失や改ざん、隠匿のリスクが指摘されおり、この問題点を 解消するための方策として法務局(遺言書保管所)が遺言書を保管する制度「自筆証書遺言書保管制度」が創設されました。 遺言者は法務局(遺言書保管所)に自筆証書遺言の保管を申請することにより、保管の際に遺言書保管官が民法の定める 自筆証書遺言の方式について外形的な確認(全文、日付及び氏名の自署、押印の有無等)を行い、法務局(遺言書保管所) でその原本及びデータを保管します。このことにより相続開始後は、家庭裁判所でその検認を経ることなく、相続人等は法 務局(遺言書保管所)に対して証明書の交付や遺言書の閲覧を請求することが可能となります。また、相続人等が証明書の 交付を受けたり、遺言書の閲覧をした場合には、法務局(遺言書保管所)からその他のすべての相続人等へ遺言書が保管さ れている旨の通知がされることになります。
2.申請・請求の手続について
遺言書の保管申請は、遺言者の「住所地」、「本籍地」、「所有不動産の所在地」のいずれかを管轄する遺言書保管所(既に 保管制度を利用している場合はその遺言書保管所)に必ず遺言者本人が出向いて手続する必要があります。 また、遺言書原本の閲覧、保管申請の撤回、変更の届出の手続については遺言書の原本が保管されている遺言書保管所で 行うことになりますが、それ以外の手続については全国のどの遺言書保管所でも行うことができます。 ただし、遺言書保管所で行うすべての手続は予約が必要であり、予約がない場合その日に手続できないことがあります。
手続【申請・請求者】 | 必要書類 | |
遺 言 者 の 手 続 | 遺言書の保管申請 | 遺言書※1、申請書、本籍の記載のある住民票の写し等(作成後3 か月以内)、本人確認書類※2、 手数料(一件につき3,900 円) |
遺言書の閲覧請求 | 請求書、本人確認書類※2、手数料(一回につきモニター閲覧1,400 円、原本閲覧1,700 円) | |
保管申請の撤回 | 撤回書、本人確認書類※2、手数料なし ※返還を受けた自筆証書遺言を破棄しない限り、その遺言の効力は失われません。 | |
変更の届出(郵送可) 【法定代理人でも可】 |
変更届出書、変更が生じた事項を証する書面(住民票の写し、戸籍謄本等)、請求人の身分証明 書のコピーの他、遺言者本人の親権者や成年後見人等の法定代理人が届出する場合は、戸籍謄本 (親権者)又は登記事項証明書(後見人等)(作成後3か月以内)、手数料なし |
|
相 続 人 等 の 手 続 ( 相 続 開 始 後 ) | 遺言書保管事実証明 書の交付請求(郵送可) |
請求書、遺言者の死亡の事実を確認できる戸籍(除籍)謄本、請求人の住民票の写し、手数料(一 通につき800 円)の他、下記の区分に応じそれぞれ該当する添付書類
|
遺言書情報証明書の 交付請求(郵送可) |
請求書、下記の区分に応じそれぞれ該当する添付書類、手数料(一通につき1,400 円)
㋐法定相続情報一覧図(住所記載有)
㋑法定相続情報一覧図(住所記載無) ㋒相続人全員の住民票の写し(作成後3か月以内)
㋓遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍)謄本 ㋔相続人全員の戸籍謄本 ㋒相続人全員の住民票の写し(作成後3か月以内)
請求人の住民票の写し
戸籍謄本(親権者)や登記事項証明書(後見人等)(作成後3か月以内) ※遺言書を保管している旨の通知を受けた方が請求する場合等は㋐から㋔までの書類の添付は不要 |
|
遺言書の閲覧請求 | 請求書、遺言書情報証明書の交付請求の必要書類と同じ添付書類、本人確認書類※2、手数料(一 回につきモニター閲覧1,400 円、原本閲覧1,700 円) |
※1 遺言書については法務省令で定める様式(A4、左側の余白が20mm以上、上側・右側の余白が5mm以上、下側の余白が 10mm以上あるもの)で事前に作成する必要があります。
※2 本人確認書類は、マイナンバーカード、運転免許証等の「顔写真付きの身分証明書」の提示が必要となります。
※3 遺言書保管事実証明書及び遺言書情報証明書の窓口請求では、証明書受取時に本人確認書類※2が必要になります。
(担当:草野 耕平)